営業活動大成功、と思いきや…

私は以前勤めていた会社で営業の仕事をしていました。私が務めていた会社では、毎月のように新しい商品が複数登場し、また同時に旧商品が姿を消していったので、営業する側もその変更内容を覚えるのに一苦労。私は、どの商品の取り扱いが終わって、新しく取り扱うどの商品がどんな性質か、こんがらがってしまうことも少なくありませんでした。

それでも、お客様に不安を抱かせないために、できる限りの情報を頭に詰め込み、整理して、堂々とした笑顔で営業活動を行わなければいけません。ある日、営業店を訪れたお客様(仮にAさんとします)の顧客情報を見て、私はAさんにはBという新商品がピッタリだ、とピンときました。私はAさんの接客をする中で、Aさんに少し時間をいただき、B商品の内容と、B商品がいかにAさんにピッタリの商品か、という点をアピールしました。

営業職なので、もちろん私にはノルマが与えられています。仕事全体のノルマはもちろん、商品ごとの売上ノルマも与えられていたので、顔は笑顔で声はやんわりしていても、必死です。もちろん、本当にAさんに合っていると思ったからこそ、営業活動をしているというのも事実ですが…。その甲斐あってか、Aさんの気持ちはB商品を購入するという方向で固まりつつありました。そして、ついにAさんから購入の意思表示が。私は「ありがとうございます!」と頭を下げ、書類を探しにバックの棚に向かいました。

しかし…B商品のための書類が見当たりません。そこでハッとしました。B商品は先月末で取り扱いが終了していたのです。B商品に関する書類は、間違ってお客様に出さないように私自身が処分したのでした…。あの時の、自分の失敗を確信したときのサーッと血の気が引くような感覚は今でも忘れられません。あのあと、Aさんには平謝りするしかありませんでしたが、悩んだ末に買うと決めた商品がすでに無かったこと、そして無い商品の説明に大切な時間が奪われたAさんの気持ちを考えると、今でもいたたまれない気持ちになります。